大家さんと僕~矢部太郎の目線~
お笑い芸人カラテカの矢部太郎が書いた漫画「大家さんと僕」が手塚治虫文化賞短編賞を受賞、というニュースをネットで見ました。しかも、発売2か月で18万部を突破するベストセラーだそうです。
少し前からこの漫画が話題になっていることは知っていたのですが、今回賞まで捕るなんてどんな漫画かなあ、と思っていたところ、週刊新潮で連載が始まり読むことができました。
お笑い芸人だけど、バラエティでうまくしゃべることができない悩みを持つ、トホホな芸人の「僕」が、バラエティによる部屋のロケ(部屋の中でバイクが走り回り、霊媒師に部屋中に御札を貼られたりと部屋がムチャクチャにされる)の放送を大家さんに見られて部屋の更新を断られます。
次に引っ越すことになったのは、新宿区のはずれでかなりご高齢のおばあさん(御年80代後半、好きなものは伊勢丹とNHKと羽生結弦)がひとり暮らしをする木造一軒家、その2階を間借りをすることに。
「ごきげんよう」と挨拶し、ほんの少しの買い物に伊勢丹までタクシーを飛ばして出かけるような、物腰が上品な「大家さん」とトホホな芸人の「僕」の、ひとつ屋根に暮らす中での心の交流を描く、ちょっとヘンテコでクスッと笑える漫画です。
はじめは、「僕」が洗濯物を干して出かけたあと雨が降ると洗濯物がとりこまれて畳んであったり、帰宅して部屋の電気を点けると「おかえりなさい」と電話がかかってきて、最初は「ひいっ」と怯えたり、困惑していたのですが、「大家さん」の部屋にお茶に呼ばれたりなどして、次第に「大家さん」との交流が始まっていきます。
昨日の出来事のように日常として戦争の話をし、俗世間に疎い「大家さん」と会話がかみ合わないながらも次第に心を通わせていく、「僕」の「大家さん」に対するやさしい目線がこの漫画のはしばしに感じられ、この漫画のキモとなっています。
画風も見ての通り、矢部太郎みたいに線が細くてタッチもほのぼのしていて、とてもこの漫画に合っています。
売れない芸人のため、仕事を選べないゆえの彼の仕事のエピソードも描かれていて、これも漫画のキモですが、これも相当ヘンテコな話で笑えます。ちなみに「大家さん」はお笑いとか俗世間のことにうといため、「僕」のことを俳優だと思っています。(これもおかしい)
今どきこういった大家さんのとの交流、なかなかないですよね、奇跡の実話です(笑)
このほのぼの感を味わいに、週刊新潮を読むのが毎週の楽しみになりそうです。
(のげ)
2018/04/27