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私の履歴書~マンガ家里中満智子さん~

日経新聞の5月の「私の履歴書」はマンガ家の里中満智子さんでした。これが面白かった。

出典:日本経済新聞HP

 

里中満智子さんは少女マンガ家の大御所ですが、わたしの上の世代なので、彼女の作品はほぼ読んだことがありません。

「私の履歴書」では(題字も彼女の字ですがその字もとても味わいがあります)、里中満智子さんが1964年のデビューから、一貫して人気のテーマより自分が描きたいテーマ(主に歴史ドラマ)を試行錯誤しながら追究していく姿がなかなか読ませます。

1960年代のデビューのころは少女漫画への偏見があり、一流大学卒の編集者に「なぜ自分が少女漫画なんかの担当に」と日ごろの不満を露骨に態度に出されたり、「本当はマンガなんぞ載せたくないが雑誌を売るためだと上が言うから」とイヤミを言われても「なにくそ、絶対にいい作品を描いてやる」と心の中で誓って頑張ってきました。

里中満智子さんがうまいのは、マンガの内容がベトナム戦争、第二次世界大戦、特攻隊、敗戦後の日本...と少女漫画にしては重い戦争をテーマにしてるものの、恋愛ドラマをうまくストーリーにからませてヒットさせ、そしてさらにヒット作を出すことで、地味でも自分が描きたいマンガの企画を通りやすくしていったところです。

1970年の「別冊少女フレンド」に発表した「わが愛の記録」は、第二次大戦中の日本で、米国人の父を持つがゆえに差別される少女と特攻隊に志願する恋人の物語。

「感動しました」と編集者を涙ぐませ、読者の評判を得て自信になったそうです。

 

面白かったのは、「あしたのジョー」の巨匠ちばてつや氏との交流の回。

里中満智子さんの高校時代の親友が大坂から上京するので、親友に出版社の仕事を紹介したら、優秀な親友はいつの間にちばてつや氏の家に出入りするようになり、最終的になんとちばてつや氏の弟さん(「キャプテン」「プレイボール」のちばあきお氏)と結婚し、里中満智子さんがキューピッドになったエピソードや、ちばてつや氏のご両親を徹底取材して戦後の引揚げ家族のマンガを描き(「あした輝く」)、ミリオンセラー、映画化したこと。

つづいて、時はうつり、少女漫画はレディースコミックの時代になり、里中満智子さんがラジオや新聞雑誌の人生相談を読みこんで、そこから不倫を題材とするレディースコミックの作品を発表したら、友だちから「わたしのしゃべった話がそのままマンガのエピソードになっている」と怒られ一生懸命説明し、誤解を解いたエピソードも面白かったです。

最後に考えさせられたのは印税のエピソード。

1970年代のマンガの単行本の印税は、少年誌は10%、それに対し少女誌はなんと6%!

同じ出版社なのに半分近くも印税の差が!少年漫画と少女漫画にはだいぶ格差があったんですね。

 

と、こんな感じで当時の、内容が濃いエピソードてんこもりの里中満智子さんの「私の履歴書」。

「私の履歴書」をこれほどちゃんと読んだのは里中満智子さんが初めて。

「私の履歴書」といえば、経済界のお偉方の武勇伝ばかりなので(ひどい偏見(笑))、これを機にマンガ家をどんどんとりあげてもらいたいですね。

それを思うと、亡くなる前に藤子不二雄Ⓐ先生の「私の履歴書」の連載、やってほしかったなあ・・・

 

(のげ)

      2022/06/03

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