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なぜロンドンのマンションにスプリンクラーが設置されていなかったか

ロンドンのタワーマンションで大規模な火災があり、多くの命が犠牲になりました。

報道によれば、建物は24階建127戸の公営住宅で、築年が約40年。外壁の修繕も行われたばかりだったとのことです。原因は電気配線系統の老朽化による発火が疑われているようです。不幸なことに低層階で発火、瞬く間に上階に延焼したようです。

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高層ビル火災では外からの消火だけではなく内部の延焼を食い止める必要がありますので、多くの消防士がビル内部に突入して消防活動を行ったのだろうと思います。

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しかし、スプリンクラーなどの消防設備は設置されていなかったのでしょうか?

BBCによれば『イングランドでスプリンクラーの設置が義務付けられているのは、2007年以降に建てられ、高さ30メートル以上の建物のみだ。この決まりは過去にさかのぼって適用されないため、1974年に完成したグレンフェル・タワーにも適用されなかった。』とのことです。

ここには日本の消防法との大きな差があります。それは「既存不適格」「既存遡及」という概念の差です。

つまり、イングランドは消防法の改正が行われても、今ある建物には改正の効力は及ばない、だから今回の建物(所有者及び管理者)にはスプリンクラー設置義務がなかった、ということになります。

一方、日本の消防法は「既存遡及」が大原則です。例えば、過去、高齢者グループホームの火災事故が一時期、多発した時期がありました。これを受けて消防法が改正されて、スプリンクラーの設置義務対象をより小規模なグループホームにも広げるように改正しました。その結果、多くの既存のグループホームにまで設置義務が及びました。所有者及び管理者には一定の猶予期間が与えられその期間内に設置義務が発生しました。同時に整備された自治体からの助成金制度を活用することで今では多くのグループホームにスプリンクラーが設置されています。

 

身近な例では、多くの賃貸住宅のオーナーが消防署からの要請で、住宅用火災報知器の設置を行ったと思います。これは日本の消防法が「既存遡及」の原則のもと、既存の建物所有者及び管理者にもその責任があると考えているからなのです。

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今後、火災の原因究明がされ、建物の管理者、所有者の責任が追求されるでしょう。しかし、同時に法律のあり方についても議論されてほしいものです。

(渡辺博之)

   

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